7月5日(土) 13時03分 -- 03


僕は足早に歩きながら、緋色が消えた理由について考えた。

緋色とハルカは、深神さんが信頼を寄せている助手だ。
深神さんがなんらかの仕事を緋色に手伝わせていてもおかしくはない。

そう考えれば、辻褄(つじつま)は合う。

深神さんには、僕とみずきを接触させたくない事情があるように思える。
だから緋色が『失踪した』ことにして、僕を事務所に閉じ込めた上で、みずきを探しているのでは?

「──僕より先に、みずきと接触するため……?」

僕はみずきの通っているはずの高校へ向かおうと池袋駅に向かっていたが、 今日は土曜日だと思い当たった。

土曜のこの時間に高校にいるとは考えにくい。
そもそもそんな場所にいたのなら、すぐに深神さんが見つけてしまうだろう。

まだ接触していないのなら、家にも学校にもいなかったということだ。
そう、たとえば、みずきが深神さんから逃れて、身を隠しているとしたら。

僕は足を止めた。

「……僕のマンション……!」

僕と同じように、七月七日の記憶があるのなら、僕のマンションのことも知っているはずだ。
僕がみずきだったら、きっとあの場所を隠れ場所に選ぶだろう。

駅に背を向け、僕は自分のマンションを目指して走り出す。
大きな本屋やバイト先のコンビニのまえを次々に通り過ぎ、僕はようやくマンションに到着した。

深く息を吸い、自分の両頬をぱん、と叩く。

「……行くぞ」

僕は階段で四階まで上がると、自分の部屋のまえまでゆっくりと歩いて行った。
廊下から見える外の空は青い。街からの雑音も途切れない。

……だいじょうぶだ。この世界に、僕はひとりではない。
自分の部屋のドアノブに手をかけたまま、扉に耳を押しつけてみた。

扉の向こうから物音はしなかったが、扉の取っ手を下に下ろすと、なんの抵抗もなく、かちり、と音を立てて開いた。