僕は人を探して、池袋の街を走り回った。
本屋、ゲームセンター、喫茶店……、
しかしどこへ行っても、明かりは点いているというのに、人の気配だけがなかった。
(そうだ、深神さんの事務所は……!?)
僕は最後の望みをかけて、駅まえのさびれた雑居ビルへと向かった。
うす汚れた階段を駆け上がった先には、見慣れた『深神探偵事務所』と書かれた看板。
僕は事務所の扉を押した。
しかし、カチャ、と金属の引っかかる音がするだけで、開くことはなかった。
(……カギがかかっている……)
ハルカ。
深神さん。
……緋色。
この世界には、あのにぎやかな彼らもいないのだ。
「落ち着け……落ち着け……落ち着け」
僕は自分に言い聞かせた。
油断すると、考えること自体を放棄してしまいそうだった。
ほんとうに、僕はひとりきりになってしまったのだろうか。
それとも僕の頭がおかしくなってしまったのだろうか?
気持ちわるい。
考えたくない。
「……う……わああぁあっ!!」
たまらず、叫んだ。
こわかった。
とにかくだれかが、だれかに、だれかを。
息を吸う。
肺にたまっていた狂気にも似た不安とともに、胸につかえている感情をはき出す。
「だれか! だれかいないか! だれでもいいから! 聞こえたら返事をしてくれ!」
はやくだれかに会いたかった。
だれでもいい。「これは全部うそだよ」と、肩を叩いてほしかった。
お願い、お願いだから。
だれか出てきてくれないか。
「……あああぁあぁッ!」
のどが痛い。
でも、叫ばずにはいられない。
夢ならさめてくれ。
そうだ、夢なんだろう?
「夢だと言ってくれよっ……!」
ひざをついて、アスファルトをにぎりこぶしで思いきりなぐった。
右手の甲から指先へ、そしてひじへと痛みが走る。
手の甲には、じわりと血がにじんだ。
……はやくここから出してくれ。
僕の気が狂ってしまうまえに。
「あの……」
そして唐突に、その声は聞こえた。
待ち望んでいた、僕以外の声だった。
勢いよくふり返ると、そこに立っていたのはひとりの小柄な少女だった。