7月4日(金) 8時00分 -- 05


僕と緋色は、いまから高校に行くよりも、深神さんに調べてもらったほうがいい、という結論にいたった。

僕たちは遊園地をあとにすると、地下鉄に乗って池袋までもどってきた。
地下鉄の駅から地上へ出てきたところで、

「ねえ、手をつないでもいい?」

緋色がそう言って、僕がそれに答えるよりもはやく、彼女は僕の手を取って、握った。
思いのほかひんやりとした緋色の手は、細くか弱い。

そして緋色と手をつないだのは、実はこれがはじめてだった。

「今日は楽しかったよ。ありがと」

緋色が純粋な笑顔で笑う。

僕は一瞬、彼女に見とれた。
そして頭で考えるよりも先に、言葉が先に出た。

「僕も楽しかった。またふたりで遊びに行こう」

その言葉に、緋色はうれしそうににっこりと笑った。

「うんっ! 約束。ぜったいに、約束ね」

そして緋色はぎゅ、とまるで大切な宝物を手にしているかのように、僕の手を強く握った。



「緋色、おかえり。そして西森少年はひさしぶりだな」

深神探偵事務所に入ると、深神さんがすぐに出迎えてくれた。

深神さんは長身なので、僕は自然と見上げる形となる。
スーツにネクタイを締めている彼は、細身だが威圧感があった。

「こんにちは、おじゃまします。ハルカは?」
「外で仕事中だ。あの子のフットワークの軽さは頼りになるからな。まあ、もうすぐ帰ってくるだろう」
「深神先生、あの大量のケーキはどうしました?」
「ああ、きちんとふたつ、残してあるぞ」
「えっ!? もうふたつしか残っていないんですか!? あんな……二十四個はあったのに……っ!」

緋色が絶望している。
それから、すっと真顔になって、言った。

「……深神先生。ちょっと話があるんですけれど、いいですか? あっちの部屋で、ふたりで」

これは深神さん、怒られるな。

横目で緋色の顔を見る僕に、深神さんは言った。

「……それでは西森少年、少しのあいだ、そこのソファに座って待っていてくれ」
「あおちゃん、テーブルの上の飴は食べてもいいけど、チョコはだめだよ! 私のだから!」
「はいはい、食べないからはやく行ってこい」

深神さんと緋色は、奥の部屋へと移動していった。
たしか、あの部屋は深神さんの書斎だったはずだ。

事務所のなかには、この待合室兼仕事場のほかにも、いくつか部屋がある。
そのうちの三つはそれぞれ深神さん、緋色、ハルカの部屋としてあてがわれている。
しかし、三人とも自室より、この場所にいる時間のほうが多いように見えた。

僕はソファに座ると、テーブルの上に置かれたお菓子の入ったカゴを自分のほうへと引き寄せた。
なかには色とりどりの飴が入っていて、そのなかにひとつだけチョコレートが入っている。

なるほど、最後の一個だから、緋色は僕にクギをさしたのか。
僕がそのチョコレートを口に放りこんだとき、深神さんと緋色が出てきた。

「あおちゃん、私ちょっと出かけてく……って、あああーっ! チョコ食べたー! 私のチョコだったのに!!」
「すごくあまくておいしい」
「うわぁん、覚えてろー!」

本気で涙目になって、緋色は事務所から飛び出していった。

……ちょっと、からかい過ぎたかな。